2つの主専攻
12の分野
地球学は、自然現象の解明から災害や環境問題の追及、人間社会の未来予測に至るまで多様な課題を対象としており、あつかう時空間スケールは、ナノスケールから地球規模まで、秒以下から億年の単位までと様々です。地球学類では、多様な地球学的課題に対応した高度な専門教育・研究をおこなうため、現在の地球環境について探求する「地球環境学主専攻」と地球の変遷史について探求する「地球進化学主専攻」の二つの主専攻を設けています。各主専攻にそれぞれ6分野、計12分野があります。
地球環境学主専攻
「地球環境」は世界的に注目されるキーワードのひとつとなっています。地球学類の地球環境学主専攻では、「地球環境」を理解するために、フィールドワークやデータ解析、室内実験等を通じて、地表面上のさまざまな空間スケールに展開する諸現象を多角的に探求します。地球環境学主専攻には、人文地理学、地誌学、地形学、水文科学、大気科学、環境動態解析学の6分野があり、地球環境を舞台に展開する人間活動の特性、人間活動と自然環境の関係、地表面上にみられる地形、水、大気など自然現象をテーマとして「地球環境」を多角的に探求します。それぞれの分野には、海外での調査・研究経験が豊富で、国際的にも活躍する研究者がそろっており,こうした最前線の研究を主専攻の教育にもフィードバックしています。
実際の研究では、聞き取り調査、土地利用調査、地形調査、河川・湖沼での調査・観測、気象観測などのフィールドワーク、観測データや既存の統計データの解析などを通じて、現実の「地球環境」の姿を把握し、さらに室内実験、数値シミュレーション等を踏まえ、それらの特性を解明しています。さらに、なぜそうした結果が導出されたのかを、「地球環境」に関連するさまざまな要因と関係づけて考察しています。しかし、それぞれの分野が完全に独立して研究を進めているわけではなく、お互いの学問分野の枠を越えて「地球環境」の特性を総合的に把握することを目指しています。こうした研究プロセスを通じて、21世紀の地球人としてふさわしい総合的な思考力を養成し、さまざまな社会的要請に応える人材育成を目指しています。
主な卒業研究
北陸地方における都市群の近接性の変化と要因分析
社会的空間からみた首都圏在住ムスリムの日常生活に関する研究
原木乾シイタケの生産・流通構造-大分県豊後大野市地域を事例として-
反都市文学の展開における地域の関与-川端康成「雪国」を例として-
方言形成における地域交流の影響-千葉県銚子方言を事例として-
地方出身大卒者の居住地移動と要因分析-長野県松本市の高校卒業者を対象に-
ミュージシャンの街下北沢の地域特性-ライブハウスとバンドに注目して-
主な卒業研究
温泉地における新たなツーリズム形態-山形県銀山温泉を事例に-
群馬県前橋市における一般廃棄物処理の空間構造
柏の葉における住民の環境意識形成と形成に影響を及ぼす要因
国際合弁企業による企業空間の変容-サハリン2プロジェクトの運営企業を事例として-
都市地域における緑地環境の維持に対する取り組み―川崎市を事例に―
短期滞在者の行動からみた金沢市における都市観光の時空間構造-位置情報付きSNSデータを活用して-
教員
松岡 憲知【教授 】
極地や高山の地形変動と永久凍土
池田 敦【准教授 】
高山帯の地形変化を水循環変動と絡めて研究
八反地 剛【准教授】
山地の地形変化.特に斜面崩壊と侵食
関口 智寛【講師】
海岸・河川地形プロセスに関する実験的研究
PARKNER, Thomas【助教 】
土壌の侵食,堆積とそれらへの人間活動の影響
主な卒業研究
広島豪雨における表層崩壊の発生条件
秋吉台カルストにおけるドリーネの土層分布
木曽山脈の森林限界移行帯における植生分布と地形量の関係
スイスアルプスにおける解氷後の露岩表面の風化の定量化
津波堆積物の分布パターンに関する実験的研究
複合流による海底微地形の類型化と形成条件
主な卒業研究
チベット高原が梅雨期の日本付近の降水へ与える影響
最終間氷期の軌道要素とアジアモンスーンの変動との関係
真夏日の午後に東京23区で観測された短時間強雨の実態調査と予測実験
北海道・東北地方における風力発電のための風速変動研究
ライブカメラを用いた富士山に出現する笠雲の気候学的研究
フェレル循環と温帯低気圧の関係についての研究
PUFFモデルを用いた桜島の空中火山灰濃度の推定と航空安全への応用
長野県富士見高原における雲海の観測
環境動態解析学
大気圏・岩石圏・水圏・生物圏の交点である地球表層での水・物質動態の解析を通して、動的な自然環境の理解を深めるとともに、人間活動による変化の解明を目指す
地球進化学主専攻
2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による大災害を目の当たりにした私たちは、地球がもつ莫大なエネルギーとその営みの複雑さを改めて認識しました。過去46億年間に地球表層から内部で起こっている様々な地質現象を解析し、理解することは、私たちがこれから地球と共生していくために必要不可欠なことといえるでしょう。地球進化学主専攻は、地球の誕生から現在にいたる進化史上の様々な地質現象の探求を基礎として、地球生命圏の共進化過程の解読と定量的な未来予測を共通の課題としています。この目的を達成するため、本主専攻では6つの分野(地史学・古生物学、地層学、構造地質学、岩石学、鉱物学、資源地質学)を設けて、専門的な研究・教育を行っています。
地球進化学の重要な基盤の1つとして、野外調査があります。特に、生物圏・地球表層環境の変遷や、地球のダイナミックな変動や進化過程の理解のために、多くの野外巡検を実施しています。卒業研究で海外でのフィールドワークをもとに研究を行う例も少なくありません。一方で、変形再現実験や、地球物理学的観測データを用いた地震学的解析やシミュレーションのような室内作業も、活発に行われています。また、同位体分析や微小領域組成分析が可能な分析装置を専攻内に設置し、岩石・鉱物・鉱床の生成機構の解明を行っています。卒業生の多くは大学院に進学してより専門的な研究を行い、国内外の学会で活躍しています。このように本主専攻では、地球システムにおける表層・内部環境の変遷を総合的・多角的に解析し、理解できる人材の育成を目指しています。
主な卒業研究
タイ国東部Sa Kaeo地域における 背弧海盆層序復元
富山市に分布する更新統三田層の堆積環境変遷と化石密集層
北西太平洋におけるサンゴ礁と造礁サンゴ群集の時空分布の変遷
ジオパークを活用した郷土学習・自然保護学習プログラムの開発
タイ国東部Sa Kaeo-Chantaburi Zoneに分布する珪質岩の岩相・年代と地球化学的特徴に基づく堆積場テクトニクス
徳島県海部郡牟岐町における過去数千年間の地震津波発生履歴
和歌山県日高町における津波浸水履歴の復元